Monday, November 3, 2008

Intel Atom Wikipedia

Intel Atom

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Atom(アトム)は、米国時間2008年3月2日に発表されたインテルが開発製造するマイクロプロセッサで、LPIAと呼ばれる低消費電力でIA-32命令セットアーキテクチャに基づくカテゴリの製品。LPIA製品としてマイクロアーキテクチャから新規に開発された初めての製品となる。2008年夏から順次出荷される。

目次

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[編集] 概要

過去にインテルのモバイル・組込向けプロセッサはIA-32製品ではなく、DEC (Digital Equipment Corporation) から買収したStrongARM部門の製品と、それを発展させた製品をXScaleブランドで販売されていた。XScaleは携帯情報端末組み込みシステムのプロセッサとして採用された(多くのPocket PCに採用された)。

当時のIA-32製品は競合していたSuperHARMと 比べ、回路規模やクロック周波数の高さから、フットプリントが大きい上に消費電力が多く、モバイル・組込機器への小型化とバッテリ駆動での長い稼働時間の 要求に応えられなかった。 しかし、IA-32プロセッサ向けの豊富なソフトウェア開発ツールやソフトウェア開発技術者の多さなどから、半導体プロセスやマイクロアーキテクチャの改 良などの技術的なブレークスルーで、前述の問題が克服されさえすれば、モバイル・組込製品に於いてもIA-32製品が受け入れられる環境は整っていた。

このような背景の中、インテルは2007年4月に、新しいプロセッサカテゴリとして、低消費電力でIA-32に基づくカテゴリの製品「LPIA」を提唱し、第一弾の製品としてIntel A100を発表した[1]。 これは専用に開発されたものでなく、既に販売されていたPentium Mマイクロアーキテクチャの第二世代にあたるCeleron M(コードネーム「Dothan-512K」、90nmプロセス)の流用であり、周辺チップも既存のICH7から消費電力の多いPCI Expressインターフェースを取り除くなどしたICH7Uが使われるなど、新規性には乏しいが、XScale部門がMarvell社に売却された事[2] などから、インテルがIA-32製品のモバイル・組込機器市場における競争力に自信を持った表れである、との指摘する向きもある。

[編集] 搭載される機能など

CPUに実装されている命令セットはIntel Core 2と互換であるとされ、x86命令、x87命令、そしてMMXSSESSE2SSE3SSSE3などの拡張命令のみならず、Intel 64Intel VTハイパースレッディング・テクノロジーEISTNXビットにも対応している。しかし、その機能が全ての製品で利用可能ではなく、製品によっては無効化されている機能も存在する。また、新しくディープパワーダウン (C6)、スレッド別の低電力状態 (TCx)、CMOSバスモードなど電力管理機能が強化された[3]

最初の製品は、細長いI/Oパッドを両サイドに配置した長方形のダイレイアウトで、製造効率が最も高いとされる正方形のダイ形状ではない。低コスト でのマルチコア化は、I/Oパッドで複数のコアを挟むこのレイアウトが有利なことから、近い将来的にマルチコア製品が発売されることを示唆しているとの意 見も有る。

[編集] 回路仕様

約4,700万個のトランジスタにより構成されており、これは現在のインテルのIA-32プロセッサの中では最も少ない。ダイサイズ25平方mm未満であり、インテル史上最小のx86プロセッサとして登場した。製造にはリーク電流低減に有効とされるハフニウム注入によるHigh-k(高誘電率)ゲート絶縁膜とメタルゲートによる45nmプロセスルールが採用されるなど省電力化が徹底されており、インテルのCPU史上最も低い動作電圧で動作し、消費電力でVIA Edenに比肩する。電圧を高くすることで当面最大で1.8GHz程度の動作周波数を予定し、それに応じてTDPは0.6から2.5W程度と抑制される[4]

[編集] ターゲット市場

[編集] Centrino Atom (Menlow)

移動端末などの低消費電力が求められる小型機に採用される予定。インテルは自身のホームページでUMPCノートパソコンPDAとの中間)や組み込み機器向けとしている。CPUコアはコードネーム「Bonnell」と呼ばれている。Bonnellを採用した製品は複数公表されており、それぞれ対象とする市場が異なる[5]

Silverhorneと統合チップセット(コードネーム「Poulsbo」、System Controller Hub - SCH)を組み合わせたプラットホーム(コードネーム「Menlow」)には、インテル Centrino Atom プロセッサー・テクノロジー (Intel Centrino Atom processor technology) というブランドネームが与えられた。

[編集] Embedded Menlow

組込機器向けの、コードネーム「Embedded Menlow」もSilverhorneとPoulsboで構成されるが、ライフサイクルサポートを7年としている点が異なる。組込機器に於いては「同じものが長期間に渡り調達可能であり続ける事」が重要となる。

[編集] Canmore

セットトップボックステレビ向けのシステム・オン・チップ。2008年後半に出荷予定[6]

以下の機能を持つ。

[編集] Sodaville

家電向けシステムオンチップ (System on a Chip - SoC) としてコードネーム「Sodaville」が2009年に計画されている[7]

[編集] Moorestown

Menlowに続くプラットホームとしてコードネーム「Moorestown」が2009年 - 2010年に予定されている[8]。Moorestownでは待機時消費電力を10分の1にするとしているので、スマートフォンのアプリケーションプロセッサなどへの採用が想定されている。

[編集] 製品群一覧

IDF Spring 2008(上海)にて、Intel Atom の製品群についての公式な発表が行われた[9]

2008年4月に最初に発表された製品群
SKU[10] 動作周波数 ハイパースレッディング FSB 2次キャッシュ TDP(HT)
Z540 1.86 GHz 533MHz 512KB 2.4W(2.64W)
Z530 1.6 GHz 533MHz 512KB 2W(2.2W)
Z520 1.33 GHz 533MHz 512KB 2W(2.2W)
Z510 1.1 GHz × 400MHz 512KB 2W
Z500 800 MHz × 400MHz 512KB 0.65W
2008年内に発表の予定されている製品[11]
SKU[12] 動作周波数 ハイパースレッディング FSB 2次キャッシュ TDP
N270 1.6 GHz 533MHz 512KB 2.5W
230 1.6 GHz 533MHz 512KB 4W
330 1.6 GHz x2 533MHz 512KB x2 8W

[編集] 補足

2次キャッシュの容量やFSBの速度はPentium 4と同程度。実質的な処理速度でも、Willamette・NorthwoodのPentium 4やNorthwood-256kのモバイルCeleronと同程度であるが、同クロックのZ530(FSB533MHz 1.6GHz TDP2.2W(HT))とPentium 4(Northwood FSB400MHz 1.6GHz TDP46.8W)とで比較した場合、TDPは後者の約4.7%となり、エネルギー効率は格段に向上した。

なお、2008年9月より出荷された330は、CPUパッケージに230を2個搭載させたモデルである[13]

[編集] 脚注

  1. ^ インテル (2008年1月19日). "Intel Processor A100 and A110 on 90 nm Process with 512-KB L2 Cache Datasheet" (PDF) (英語). 2008年4月5日 閲覧。
  2. ^ インテル (2006年6月27日). "Marvell To Purchase Intel’s Communications And Application Processor Business For $600 Million" (英語). 2008年4月5日 閲覧。
  3. ^ Intel Atom Processor Z5xx Series Datasheet - Apr 2008 Intel
  4. ^ IEEE Spectrum: The High-k Solution - Mark T. Bohr, Robert S. Chau, Tahir Ghani, and Kaizad Mistry - 2008
  5. ^ Technology@Intel · Deciphering Intel codewords for Mobile Internet Devices (MIDs)
  6. ^ 日経BP
  7. ^ 日経BP
  8. ^ PC Watch
  9. ^ intel - New IntelR CentrinoR Atom? Processor Technology Ushers in 'Best Internet Experience in Your Pocket']
  10. ^ SKU - Stock Keeping Unit; Intel Atom Z5xxシリーズは、CPU+SCHを出荷単位とする。
  11. ^ "Netbooks and Nettops" (PDF) (英語) (2008年4月3日). 2008年4月8日 閲覧。
  12. ^ SKU - Stock Keeping Unit; Intel Atom N270 はCPU+i975GSE+ICH7Mを出荷単位とする。
  13. ^ 疑似クアッドコアのAtom 330、消費電力が上昇:ニュース

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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