Monday, January 26, 2009

日本の人事部・アメリカの人事部-日米企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060907

日本企業の人事部とアメリカ企業の人事部の違いは?日本もアメリカもともに市場重視の傾向にあるのか?平等と効率は両立するのか?株主とそれ以外のステークホルダーの最適なバランスとは?資本主義は多様化するのか、それとも収斂に向かうのか?本書は、日米の大企業におけるコーポレート・ガバナンスと雇用関係について書かれています。日米両国の大企業への大規模調査をもとに、経済・経営のみならず、歴史や企業文化など幅広い視点から分析し、今後の展望を示します。

第1章 企業経営と資本主義の多様性
第2章 巨大日本企業の人事部―これまでの実態
第3章 現代日本企業の内実
第4章 アメリカにおける人的資源管理の展開
第5章 現代アメリカ企業の内実
第6章 調査データの比較
第7章 評価と展望

例によって、「キャリアデザインマガジン」のための書評です。それにしても、企業内における財務と人事の力関係、という視点は私にとっては非常に斬新なものでした。とはいえ、それは私がヒラ社員だからで、財務部長とか人事部長とかいう立場の人だと、こういうのは日本企業でもけっこう切実な問題なのでしょうかねぇ。

ということで以下に転載しておきます。

 日米の大企業の事例研究をもとに、企業における人事部の役割とその位置づけを、企業統治の観点を踏まえて比較検証した本ということになるだろうか。

 この本によれば、日本企業の人事部は米国企業の人事部に較べて役割が大きく、社内の位置づけも高い傾向があるという。これは、人事戦略の面でも企業統治の面でも、日本企業が比較的組織重視指向なのに対し、米国企業はより市場重視指向であることによる。ただし、米国のほうが日本に較べて多様であり、日本企業に近い役割・位置付けの企業もあれば、ごく限られた役割しか持たない企業もある。日本企業は近年市場重視の方向にシフトしているが、米国はさらに急速に市場重視に動いており、結果として日本企業が「改革」に取り組んでいるにもかかわらず、両国の差は拡大しているという。

 この違いは日米間のキャリア形成の違いによるところも大きいだろう。日本企業は、こと正社員については長期雇用のもとに内部育成し、他社にない独自の技術、ノウハウを持つ人材を多数育成することを競争力の源泉としてきた。そのために重要な意味を持つ社内キャリアの形成については、各職場のマネージャーに加えて、人事部が大きな役割を果たしてきた。当然ながらその教育投資は多額なものとなり、したがって一時的な経営不振への対処として人員削減を行うのは得策であるとは考えられてこなかった。企業統治の観点からみても、人事部は財務部と同等程度の社内的地位を有することになろう。

 これに対し、米国企業は多くの場合社内育成には日本企業ほどは注力しないといわれる。外部労働市場からの採用も一般的に行われる。そうなると、採用などの権限は現場の監督者に委ねたほうが効率的になるし、一時的な経営不振下であっても人員削減を実施することは損失にならない。となると、人事部の役割は限られ、社内的地位も財務部を大きく下回ることになるものと思われる。

 著者は日米のいずれが優れているかという点については言及していない。とはいえ、著者は米国の株価下落、M&Aの不調などから、財務部もまた輝きを失っていると指摘し、人事部が影響力を高めていく可能性を指摘している。それを見て、著者はどちらかといえば日本的なあり方にシンパシーを持っているのではないかと推測するのは、さすがに身勝手というものだろうか。


http://www.pm-forum.org/100satsu/archives/2006/06/post_443.html

本書は、経済のグローバル化によって、研究と論争の焦点が「アメリカ流の規制やリスク・シェアリング、ガバナンスのパターンなどがいかに速やかに世界に根を張るかを予測するところへ移った」中で、米国と日本の大企業における人事部の役割を比較することで、「グローバル化が日米企業組織に収斂をもたらしつつあるのかどうかを判定すること」を目的としたものです。本書は、日本的システムの核となる要素の一つとして本社人事部を挙げ、人事管理者が取締役会において、「従業員の関心事項を他の経営者たちに説明し、戦略的意思決定において正社員すなわち中核的従業員の代弁者としても行動」しているのに対し、米国では、「人事管理者は経営管理階層序列の最下層かその近辺に位置づけられ」、力のある職能部門といえば、製造、マーケティング、財務部門であることが述べられています。
 まず、日本企業において、人事部の規模と権力が大きかった理由としては、
(1)社員に「生涯にわたる」キャリアを形成させるための教育、能力開発、そして昇進の計画的管理。
(2)多くの企業にごく一般的に見られる企業別組合との交渉と協議。
(3)他者あるいは外部労働市場における水準ではなく、年齢・年功・業績評価といった社内要因を重視する給与制度。
(4)社員の教育、レクリエーション、福利厚生といった施策の本社集権的な管理
の4点が挙げられていて、これらの慣行の起源を、社会保険制度の未整備、熟練労働者不足、戦闘的な労働運動の波などの要因に求めています。
 また、日本企業の人事部の持つ影響力には、経営トップ選抜の影の実力者としての評判が寄与していたことなどについても触れられています。これは、コーポレート・ガバナンスの問題においても、「経営陣に社会に貢献する会社の将来展望を共有するようにさせ、次にその将来展望に沿って企業という共同体を統治するのに最良の人物を抜擢する」ことが、人事部の責任であることが述べられています。
 本書は、理論的な分析に加えて、6業界から7つの日本企業をケースとして分析しています。その観察によれば、日本企業はかなりの多様性を示し、
・権限が人事部に集中:J証券、J運輸、J部品工業
・適度に集中:J電機と2つの建設会社
・適度に分権化:Jエレクトロニクス
とさまざまであることが明らかになっています。
 一方、米国企業に関しては、人事管理者が、「明確な歴史を持つセミプロとして自身を形成してきた」ことが述べられ、管理階層上の一集団として弱い立場におかれている理由として、
(1)量的な基準で考える人々に支配されているビジネス文化のなかで、質的な問題を取り扱っていたこと。
(2)自分たちが容易に利用できるモデルがあったにもかかわらず、首尾一貫した理論的枠組みを一度も構築してこなかったこと。
(3)在職期間が短く、あまり教育に熱心でないといった雇用慣行のもと、雇用管理に関する組織独自の規則や手続きをそれほど必要としなかったこと。
を挙げています。
 歴史的には、第二次大戦後に、人事管理で心理学が演じる重要性が増大し、従業員モチベーションの研究が進んだこと、1980年代以降、株主志向の高まりによって、企業特殊的な技能の獲得といった長期(組織思考)の基準よりも短期(市場指向)の基準が重視される場面が増え、人事担当役員の力が弱体化したことが述べられています。
 米国企業に関するケース分析では、米国の本社人事部職能が著しく多様であることとともに、その分布パターンとして、
(1)競争優位を生み出す企業特殊的スキルをもった従業員を基盤として、資源ベースの事業戦略と人的資源戦略を追求する企業群。
(2)相対的には汎用スキルを持った従業員を主体にしており、短期の株主利益追求志向が強い企業群。
の2つの山を持っていることが述べられています。
 本書はこの後、日米両国の人事部の機能について、ケース分析に基づいた比較を行っています。
 本書は、日本企業の人事制度に問題意識を持つ人にとって、米国企業という比較対象を置くことで、その強みと弱みを明らかにしてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の中で、成果給の導入の重要な理由の一つとして、「業績の振るわない者の給料を抑えることで解雇しない方針(ノー・レイオフ・ポリシー)に伴うコストを埋め合わせる点にある」ことが述べられています。このようにして集められた金額の一部は「業績を上げている」社員に再配分されます。
 著者は、このようにして生じた「これまでよりも大きな給与格差」を「終身雇用を維持する代価なのである」と述べ、その例証として、J証券におけるリストラクチャリングが、人員削減無しに達成することを意図したものであり、社員数が過剰なのではなく、「社員に支払われる最低保障給与である基本給が高いこと」が問題であるとしています。
 この新しい給与体系は、本社人事部にとって、注目度の高い制度である一方、成果の重視は意思決定の分権化を伴い、組織上の縄張り争いが生じることが述べられています。


■ どんな人にオススメ?

・「日本企業の人事はおかしい」とは感じているけれど、どこがおかしいのかは指摘できない人。

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