Tuesday, January 27, 2009

蜂女王の生活

『ブラジルの養蜂』 麻生悌三さんの今年最後の寄稿です。
今 年一番沢山『私たちの40年!!』の寄稿集に原稿を送って下さったのが麻生悌三さんです。得意とする農業関係、農業製品が中心ですが、既に取り上げる話題 が枯渇?しつつあるとのことで来年は、投稿が難しくなるのではないかとのコメントも寄せておられますが、少し話題を広めれば健筆家の麻生さんのことですか ら最低月に一度は原稿を送って呉れるのではないかと期待しています。最近は、日本での消費が少なくなってしまっている馬肉やエビ、魚介類、以前フランスに 輸出したうさぎ肉、お蚕(絹糸)、蕎麦(サラセン麦)等マイナーではあるが面白い題材もまだ残っていると思います。2009年に期待したいと思います。
この養蜂の原稿は、訪日前後に送って頂いたものですがどさくさに紛れてか余り重なり過ぎてもとの配慮から忘れてしまったのか今回、再送頂き収録させて貰う事になったものです。麻生さん御免なさい。
写真は、養蜂の写真をと探して見たのですが適当なものが見つからず簡単な蜜蜂の写真をGOOGLE検索からお借りして使用することにしました。


世界の蜂蜜の年間の生産量は、約120万トンと見積もられている。主要生産国は中国
(28万トン)、アメリカ(18万トン)、アルゼンチン(8万トン)である。ブラジルは2万トンである。主要輸出国は中国(年間8万トン)、アルゼンチン (6万トン),メキシコ(3万トン)である。ブラジルは1,2万トンを2007年にアメリカ、欧州に輸出している。一方、主要輸入国は、アメリカ(年間 10万トン)、ドイツ(9万トン)、日本(5万トン)、イギリス(3万トン)である。

―ブラジルの養蜂
ブラジルにも、原種の蜜蜂はいるが、企業的に用いられている蜂は、18世紀にポルトガルから持ち込まれた,欧州種の蜂であり、その後、ドイツ、イタリーからも移入された。
企業的規模の養蜂は、絶えず蜜源たる花を求めて移動する。パラナ州からピアウイ州まで移動する業者もいる。蜂の巣箱一つには普通3万―5万匹の蜂が収容され、一匹の女王蜂、
3-5%の雄蜂(種付けだけの役目)と95%以上の雌蜂(働き蜂)によって構成される。
この巣箱の数はブラジルでは200万個あると言われている。ブラジルは厳しい冬がなく、
1年を通して採蜜が可能であり、養蜂の効率も良いが,蜜源の花と種類が無数にあり、蜂蜜の種類(花の種類)が限定されにくく(北半球のレンゲ、クローバー等蜜源による区分)
色々の花蜜の混じった蜂蜜が生産される。
欧州種の蜂はおとなしく取り扱い易いが、暑さに弱く、サンパウロ州以北の養蜂は効率が良くないと言われて来た。東北伯方面の養蜂の発展のため、政府は品種改良を模索してきた。
1956年にピラシカーバ農大のケール教授は獰猛だが、採蜜能力も高く、暑さに強いアフリカ蜂を試験用に数群導入した。サンパウロ州リオクラーロの試験場 で、管理ミスから1群が逃げ出す事件があった。逃げ出したアフリカ蜂は野生化し、欧州種蜜蜂と交配を重ね拡散した。アフリカ蜂は勤勉性と引き換えに,気性 が荒く、遺伝子が優性であるため、欧州種の交配で益々凶暴化してしまったKiller Bee(殺人蜂)の誕生により相次ぐ人畜の被害は拡がり(アメリカでスオームと言う題名の映画も作られた)。1957年に逃げ出して
以来28年後の1985年には野生化したアフリカ蜂はパナマに到達した。パナマで蜂の
北上阻止の方策が取られたが、突破され、1990年にはメキシコに到達し、一部はカリフォルニアに侵入した。アフリカ蜂は出身地の影響で寒さに弱く、この 辺が北上の限界地と見られている。(南下はラプラタ河で止まっている)。現在のブラジルの蜜蜂は全て欧州種とアフリカ蜂の交配種であり、その凶暴性と引き 換えに、ブラジルの蜂蜜の生産量は数倍に上がった。

―蜜蜂の不思議な生態
世界の蜂の種類は2万種と言われているが、蜜蜂ほど類いまれな社会性を持ち、神秘的な昆虫はない.1匹の女王蜂は1日に約2千個の卵を産み、しかも長寿で6-7年生きる。
数万の働き蜂(全て中性化された雌)は40日位で生涯を終える、又、種付けだけの役目の数百匹の雄蜂は交尾が終わるいなや死ぬか、交尾にあぶれて巣に帰っ ても、やがて、働き蜂に追い出されて飢えて死ぬ。同じ雌に生まれて、1匹の女王蜂になるか、数万匹の働き蜂になるかは、卵から孵化して3日後の餌によって 決定される。孵化した幼虫は3日間は同じ餌を与えられるが、女王蜂になる雌蜂はローヤルゼリーを与えられる。一方、働き蜂になる雌蜂は蜂蜜と花粉で育つ。 働き蜂は中性化されるホルモンを女王蜂が分泌して与えられる。女王蜂は雄蜂と雌蜂を自由に産み分けられる.雄の卵を産む時は、受精嚢の口を閉ざして,精子 を出さない、単為生殖の不受精卵になる。雄は採蜜も行わず、働き蜂に餌を貰い交尾だけの役目である。働き蜂より目玉の大きい雄は春先から夏にかけて、数百
匹が羽化し、晴天の日に地上15メートルの上空で女王蜂の舞い上がるのを待ち受ける。
女王蜂が舞い上がり,性ホルモンを発散させ飛翔する。女王蜂に追いついた雄1匹だけが
交尾を行い、交尾が終わったと同時にショック死する。
蜜蜂の社会は女王蜂1匹と中性化した雌の働き蜂の2大階級社会で、空中で交尾した女王蜂も産卵一筋で他の機能は退化してしまい働き蜂に食事の面倒まで見てもらう。働き蜂は
卵巣が萎縮し産卵機能は喪失している。巣の掃除、保育、門番、採蜜等を順番に成長日ごとに換えて行う。羽化後3日たつと、口から蜂乳を出して、口移しで幼虫を保育する、羽化後2週間経つと巣つくり及び採蜜より戻った働き蜂から口移しで蜜を受け取り貯蔵する
仕事。羽化後20日経つと巣の門衛となり、さらに2-3日経つと外勤に転じ10日ぐらいの間、蜜を集める。私たちが、外で見かける蜂は年老いた働き蜂である。
10匹の蜂が集める蜜の重さが1グラム、スプーン一杯の蜜を集めるのに200回の採蜜が必要となる。集めた蜜はそれだけでは蜂蜜にならない。巣で待ち受けている蜂に口移しで蜜お移し、蜂の内臓で発酵させ、花蜜を蔗糖からブドウ糖に変えます。その糖度の低い蜜
を羽を動かし風を貯蔵庫に送り、水分を飛ばして、糖度を高めます。糖度が80%ぐらいになると(糖度80%、水分20% - Brix 80)巣房に蓋をして貯蔵します。因みに、針を持っているのは働き蜂だけで、雄蜂(蜜蜂のみ)は針を持ちません。働き蜂の針も1回刺すと内臓も飛び出し死 んでしまう(すずめ蜂のように何回も刺ししかも雄は強力な針を持つ蜂もある)。女王蜂も針はあるが、これは新しく誕生した妹女王蜂と女王の座をかけて争う 時に使う姉妹決闘用の針で人は刺さない。
数万匹の社会に君臨した女王蜂が死んだらどうなるか。その時は中性の働き蜂に変化が起こる。孵化後3日以内の雌の巣房に改造がおこなわられる(女王蜂の体 は働き蜂の数倍あり幼虫の6角形の巣房を広げないと収容できない)。そして、ローヤルゼリーが選ばれた1匹に与えられて、シンデレラ姫の誕生となる。
幼虫がいなかった場合は、中性化された働き蜂の卵巣が目覚め、産卵を開始し、急場をしのぐ。又、女王の産卵能力が25%以下になる時(1日500個以下の産卵)、女王は娘の
女王に座を譲る。新女王が誕生すると,旧女王は配下の働き蜂を引き連れて巣を出てゆく
掟になっており、これを分封と言う。分封の際、出てゆく働き蜂は蜜の貯蔵庫から腹いっぱい蜜を吸いだして持ってゆくので、巣に残った新女王と働き蜂が栄養失調になるケースも起こる。分封が終わって新住居に移ると、女王蜂に再び女王物質が分泌され、集団は統制される。

―蜂蜜の蜜源(花)
働き蜂は蜜源のありかを仲間に知らせるダンスを踊る。蜜源が100メータ以内の場合
8の字に動き、蜜源のありかの角度を知らす。それ以上の距離の場合は円形に動く、距離
が遠いいほど、動きはゆっくりとなる。採蜜は巣から半径1キロの範囲で行うのが普通。
蜂蜜は花の種類によって香りや、味が変わり、成分もそれなりの特徴が現れます。
世界的に有名な花の蜂蜜は。クローバー=カナダ、アルゼンチン、ラスベリー=アメリカ
ローズマリー=スペイン、アカシア=ルーマニア、中国、レンゲ=日本、中国、コーヒー
=ガテマラ、オレンジ=メキシコ。
ブラジルでも少ないが特定の花に限定した蜂蜜がある。
植物名          薬効
ユーカリ         呼吸器系
オレンジ         整腸剤、沈静剤
砂糖黍          虚弱体質
カシュー         風邪
marmeiro         糖尿病
assa peixe        虚弱幼児 
guaco          せき
agriao          風邪
cipo uva         肝臓

―プロポリス
プロポリスとは植物の樹皮,葉、樹脂等を蜂の唾液で練った物に蜜蝋、花粉、酵素が混じりあった有機物である。主要成分のフラボノイドに抗菌作用があり、防腐効果も高い。
蜂の巣箱の隙間にプロポリスを塗り、バクテリアの浸入を防ぐ防壁を作る。全ての蜂が
プロポリスを作る訳で無く(日本蜜蜂は作らない)、主役はアフリカ蜂である。プロポリス
を採るためには、蜂蜜を採るのとは異なり、森林中に巣を置き、バクテリアの浸入を防ぐ防壁を作らせる。その防壁をかきとった物がプロポリスの原塊である。ブラジルの亜熱帯
圏の森林中には多様な植物が茂り、豊富な原料があるが、ビールスも強力である。従い、より効果的にプロポリスを張り詰める必要がある。薬効も北半球のプロポリスの5倍近く強い。採集量は巣箱一箱から年間で100 - 300グラムである。
1982年からプロポリスの採集を目的とした養蜂が始まり、1985年に300キロの輸出が行われた。1999年には年間50トンの輸出が行はれた(仕向刻は95%日本向け)。
最近はブームも去り、年間30トン程度の輸出で、輸出高は約6百万ドル程度。産地はミナス州とパラナ州が多いい。一般的なプロポリスの成分は次の通り。
フラボノイド、ビタミン、ミネラル      5%
樹脂,芳香柚                50-55%
蝋                     25-30%
植油                    10%
花粉                     5%
輸出業者は約30軒あり、その中でMNプロポリスのシェアーが40%ぐらいあると推測する。
以上
麻生
2008年-6月3日  

1 comment:

Unknown said...

蜂がいなくなると農作物の受粉ができず、食料が不足するなんて思いもよらなかったですね。