株式等リスク商品への期待投資利回りの目安は8%か?
<< 作成日時 : 2009/01/02 20:55 >>
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株式などのリスク資産の投資利回りとしては、何%程度を目標とすればいいのでしょうか。その年の経済成長率や市場金利、株式市場の取引動向などによっても異なってきますが、一昔前、年間8%の利回りが確保できれば十分という話を聞いたことがあります。「ゴールデン8(エイト)」といって、ファンドマネージャーでは誇れる数字なのだとか。
これもまた一昔前、どこで読んだのか、捜しても出典が見つからないので、記憶だけの話で恐縮ですが、ローマ帝国以来の人類史上の金利を平均すると、6%になるのだとかで、これは収益率のもう一つの目安とできるように思います(・・・が、計算方法は書いてありませんでした)。
前回のブログ記事で触れました山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員の株式投資運用期待利回りは、6%を想定していましたが、これは市場金利α(同氏執筆時点のコールレート0.5%、長期金利1.5%前後)に、株式のリスク・プレミアムR(株式投資の危険料率のヒアリングによる平均値)が5%であるという研究結果を加算したもの(α+R)です。この場合は市場金利が上昇すれば、その分だけ運用期待利回りは上昇することになります。株式投資の場合は中長期想定が普通だと思いますので、この場合は長期金利1.5%+リスク・プレミアム5.0%=6.5%を期待利回りとするのが本来は正確でしょう。山崎氏は控えめな数値に丸めているのだと思います(※1)。
その前の当ブログで、本多静六氏の1/4強制貯蓄の話を書きましたが、本多氏の本では明治末~昭和初期頃のこととして、預金金利4%、株式配当利回り8%程度であったとされています。併せて、安田財閥の安田善次郎翁の株式売買手法として、「6分売り、8分買い」、要するに利回り8%の株を買って6%に下がった(つまり株価が上がった)ら売る、という方法が紹介されてもいます(※2)。
また、最近読んだ中では、ジム・クレイマーが優秀なファンドマネージャーとして挙げている諸氏の5年間平均利回りが参考になると思います。①ウィル・ダーノフ 3.99%、②リッチー・フリーマン5.83%、③リッチ・フロゼナ 13%、④ローレンス・オリアナ 12.5%、⑤クライド・マクレガー 11.76%、ということで、クレイマーは①② のファンマネは褒めてはいますが絶賛するほどではなく、③④⑤については絶賛しています(※3)。
つまり、クレイマーの経験則による株式投資期待利回りは、②と⑤の中間で概ね8%強ということなのでしょう。ちなみに2006 年の米国FF金利は4.75%、10年物国債は4.70%でしたので、クレイマー想定の株式リスク・プレミアムは3.3%程度ということになります(※ 4)。クレイマーは超強気の人なので、株式投資期待利回り8%強というのは、強めの数値と見る方が無難でしょう。
ごちゃまぜの状況証拠だけの話となりましたが、結論的には、比較的低リスク資産の期待運用利回りをα(2~6)%、株式リスク・プレミアムをR(6~2)%とすると、株式期待利回りはその合計で8%というのが、おおよその平均基準ではないかと当室では考えています。感覚的な議論になりますが、この株式期待利回り8%というのは、おそらくは、平均的な経済状況下では普遍的な数値(つまり、α+R=8%で一定)ではないかと思います。
山崎氏の提示した株式リスク・プレミアム5%というのは、現在が低金利(12/29現在の新発10年国債最終利回り1.20%)、つまり不景気であるがゆえに株式投資が敬遠されてリスク幅とその対価が大きくなっているものと考えられ、金利が或る程度上昇してくれば、要求されるリスク・プレミアムは縮小して2%に近接するものと思います。それは、金利が上昇する状況下では景気が良くなってきているわけですから、株価の上昇に抵抗感がなくなり、株価上昇に対する予想リスクが縮小して株式投資のリスク対価が低下するためです。したがって、α+R=8%で一定、という想定は、あながち当室の偏見とは言い切れないように思います。
J-REITに関する当室ブログ記事では、表面利回り20%超のものでも、いずれ7~8%の正常値へ収束に向かうというようなことを書きましたが、実は「正常値」のイメージはそこにあります。当室では、J-REITも株式と同様のリスク商品と解釈して、期待利回り7~8%はほしいと考えています。しかし、20%超の表面利回りは、いくらなんでも大き過ぎるわけです。他方で、4%台の利回りのリートもありますが、これは基準価格が上がり過ぎ、という判断です。財務体力等の差異から、8%を基準として前後2%幅は容認するとしても、利回り4%台ではリートに投資する気分にはなれません。かつての不動産バブル期には、投資マンションの利回りは2~3%にまで低下していました。リートの利回り4%台もそれに準ずるものと思います。
以上から、投資利回り年8%以上が確保できれば、まず成功と解釈でき、これを大きく超えられれば、大成功と言えるでしょう。現在、表面利回り15%以上の投信がたくさんありますが、個別株で少しぐらい勝てても、運用資産全体ではなかなかこれだけの年間利回りはたたき出せないと思いますので、高利回り投信への投資検討余地は十分あるものと思います。
なお、毎月分配型の投信は非効率だという理由で、エコノミスト間での評判は悪いようですが、利回り計算が明確にできるというメリットが大変大きく、また確実に分配金が手元に確保できますので、当室の好みには合っています。高利回り投信の場合は、批判されている非効率部分の存在を考慮しても、投資利回りは十分な水準でしょう。
(※1)「超簡単 お金の運用術」(山崎元著 08/12/30 朝日新書)
(※2)「私の財産告白」(本多静六著 05/07/20 実業之日本社刊)
(※3)「ジム・クレイマーの株式投資大作戦」 (ジム・クレイマー著 06/07/18 日本経済新聞社刊)
(※4)週刊東洋経済2008.12.27-2009.1.3号による。ついでに言うと、同年の米GDP実質成長率は2.8%でした
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